篠原先生
ネットやゲームとつき合う
今回は、子どもとネットやゲームについて論じた本の中から、押さえておきたいポイントを紹介くださいます。今後対応するときにとても参考になりますよ。
重要性が高まる一方で
プログラミング教育が始まり、子どもにプログラミング的思考の獲得が求められています。そのための楽しく教育的なゲームも多数開発され、アクティブラーニングでは、ネットでの事前学習が欠かせません。
一方でゲーム依存、ネット依存、スマホ依存などの事例や調査結果を示されると不安になります。ゲーム、スマホ、ネットで子どもの脳がどうにかなってしまうのではないかと。
そんなとき、児童精神科医の吉川徹先生が『ゲーム・ネットの世界から離れられない子どもたち子どもが社会から孤立しないために』(合同出版)を出版されました。その内容は私たちが行動嗜癖(しへき:ゲーム依存、ギャンブル依存など)で主張してきたことと重なります。ぜひ読んでいただきたいですが、今回はその一部を紹介します。
勉強を「罰」にしない
《診察室でよく「宿題をやってからゲームをする」という約束を耳にしますが、これはなかなか筋の悪いものです》と吉川先生はいいます。どういうことでしょうか?
この場合、ゲームは宿題を終えた「ごほうび」になっています。それ自体悪くはないのですが、問題は「宿題」が「罰」「いやなこと」になっている点です。ごほうびを先延ばししてがんばれる子ならそう問題ないですが、そうでない子なら、宿題や勉強はいやなこと、早く終えたい、適当でいいとなりかねません。
そう気がせくお子さんの場合は、宿題や勉強を一緒にしながらほめることがまず大事です。また、先にゲームをする、区切りのいいところまでやるなど、やめ方を決めておくことが有効です。
子どもに教えたくないこと
吉川先生は子どもにできれば教えたくないこととして
《大人はネットやゲームに興味がない、嫌っている》
《ネットやゲームのことは話題にしない方がよい、隠した方がよい》
《ネットやゲームのことを大人に尋ねても助けにならない》
を上げています。
親に相談しても仕方がないと思わせることがダメ。何かが起きたとき、起きかけたときに、親や周囲の大人が相談相手として選ばれることが大事なのです。
《約束を守らない時の罰として、機械やコントローラーなどを取り上げるという方法がよく使われます。こうした強硬手段を使うこと自体が、衝突を引き起こしたり、嘘をつくことを増やしたりするので、長い目で見ると不利益な事態を招くことが多い……》
親が一方的にルールを決めるのではなく、親子で話し合ってルールを決めることです。そのためには親もゲームやネットにまあまあ詳しくあってほしい。少なくとも自分の子どもにとってのゲームやネットの魅力を具体的に聞いておくことが大事です。
重症例はネットやゲームの結果とは言いにくい
《よくメディアで取り上げられているネット、ゲームへの嗜癖の極めて重症な事例であっても、本人や周囲が最も困っていることが、ネットやゲームの使い過ぎそのものであることは、実は稀です。本当の困りごとは、その周辺の問題や背景にある他の精神疾患であることも多いのです》
《多くの場合は併存する精神疾患の治療や、いじめや大人との関係のこじれについての現実的な解決、また、不登校や引きこもりに対する支援や介入が優先されることになります》
重症化している場合は、ネットやゲームの問題を中心的にとらえても役に立たないことが多いのです。そうでないなら、約束づくりなど予防的対応で十分です。
(ポピー編集部より)
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