篠原先生

2017.12.14

鏡のような脳細胞

よくいわれるように、「まなぶ」と「まねぶ」、そして「まねる」の語源は同じとか。今回は、それと関係がありそうな(!?)、興味深い脳細胞のお話です。

早速ですが問題です

上の3枚の図は何をしているときの脳活動でしょうか?

図はNIRSという機械で得られた脳画像です。黄色から赤いところが脳活動が盛んな場所、青いところは脳が休まり沈静化している場所です。

どの図でも、頭のてっぺんから耳の少し前にかけての脳が活動しています。ここは運動野や前運動野。運動野は筋肉とつながっていて体の動きをコントロールするところです。前運動野はそのプランニングをするところです。どの図でも、特に手や口を動かすことにかかわる部位が活性化しています。

さて、この人は何をしているのでしょうか?

ヒント1:食べ物が関係します。
ヒント2:左の脳は右半身のコントロールにかかわります。

答えは…

「何か食べ物を食べている???」
「右利きの人が何かを食べている?」

そう答えた方、すばらしい。

確かに手や口を動かすことにかかわる部位が活動を高めているし、左脳なので、動いているのは右。だから、右手で何かを食べているのではないかという推測はきわめて優れています。

……しかし、残念ながら不正解です。

実はこの図は、左からかつ丼、ラーメン、餃子を食べているシーンを「見ている」ときの脳活動です。実際には手は全く動かしていません。見ているだけです

ミラーニューロン

イタリア、パロマ大のリゾラッティらは、サルの前頭葉のニューロン(神経細胞)の活動を計測していました。そのニューロンはサルがえさを手に持って口に運ぶときに活動するニューロンでした。

実験の最中、ちょっと休憩ということでリゾラッティらはジェラートを食べ始めたそうです。すると、ジェラートを口に運ぶたびに「バリバリバリ」、サルの神経細胞が活動したのです。 サルが口に食べ物を運ぶときに活動したニューロンが、リゾラッティたちが食べ物を口に運ぶのを「見る」ときにも活動したのです。

このニューロンは相手の動作や意図を、鏡(ミラー)のように写し取るニューロンということで「ミラーニューロン」と名付けられました。

見ることは学ぶこと

最初の三つの脳の図も、このミラーニューロンの活動を反映したものと考えられます。かつ丼、ラーメン、餃子を食べるのを見て、自分が食べるときのような脳活動が現れたわけです。

面白いのはラーメンのとき。 他に比べて活性度が小さくなっています。この被験者は実験前の食事がラーメンだったそうで、いまひとつそそらなかったそうです。ミラーニューロンはただ見ているよりは、見たい、したい、真似たいと思ってみたほうが活動するのです。

何かを覚えるとき、「見て盗め」などと言われます。 これはミラーニューロンの働きを考えると正論なわけです。そしてこのとき重要なのは、ただボーっと見るのではなく、真似よう、盗もうと、しっかり見ることです。 そう思えるような具体的なターゲットを持つことです。

何を真似たいのか、誰のようになりたいのか、憧れの何かをもつこと。そしてその対象をしっかりと見ること。これが、ミラーニューロンを介して自分を効率的に高めていくコツになります。

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