ヒゲおやじ先生の脳コラム

2017.12.01

4月から新しくなるポピーで実験しました

篠原先生の監修により、楽しく、バランスよく「脳を育てる」教材をお届けしている幼児ポピーが、4月からパワーアップ。今回は、一足早く、その新4月号を使って実験した結果をご報告いただきます。新たに盛り込まれた内容で、ねらいどおりの脳活動がお子さんたちに見られたようです。

※この記事は、「ほほえみお母さん&お父さん」2014年1月号に掲載されたものです。

毎年、脳活動を調べる理由

私たちは、2006年から毎年、「幼児ポピーを使っているときの脳活動」をfNIRS(機能的多チャンネル近赤外線分光法装置)という装置を使って測定しています。「この教材は脳のこういうところを刺激する」と理論的には考えられても、実際、そうなるかは調べてみないとわからない。幼児ポピーを皆さんにお勧めする限りは、その教材を使っているときの子どもたちの脳活動を確かめる責務があると考えているからです。特に今年は改訂の年、新作問題を中心に測定しました。その結果をかいつまんで報告します。

年少さんでは遊びと学習の区別がないのがいい

まずは年少さんの実験です。「きってあそぼう!ちょうちょ」(図1)で脳活動を調べました。はさみで切って「ちょうちょ」を作り、指にはめて遊ぶ遊びです。
そのときの脳活動が図2です。左の脳の、運動のプランニングにかかわる前運動野(ぜんうんどうや)、筋肉に直結しコントロールする運動野、触っている感覚などを伝える体性感覚野(たいせいかんかくや)が活発に活動しています。また注意の集中にかかわる左右の前頭葉の上部の活動も高まっています。右の脳では、ワーキングメモリにかかわる背外側前頭前野(はいがいそくぜんとうぜんや)の活動が高まっており、脳に映像的にメモしながら「ちょうちょ」を作って遊んでいることが伺われます。

興味深いのはこの「きってあそぼう!ちょうちょ」という遊びともいえる課題での脳活動と、「かいてみよう!」(図3)のような、やや学習的な課題での脳活動が極めて近いことです。同じように左の前運動野、運動野、体性感覚野の活動が高まり、右の背外側前頭前野の活動が高まっています(図4)。やや学習的な分、より強く画像的に脳にメモすることが要求され、その分、右の背外側前頭前野の活動や、より注意力を要求される分、左の前頭葉の上部の活動が高まっていますが、その活動パターンは「きってあそぼう!」に近いのです。またどちらもストレスがかかると活動を高めやすい右の前頭葉の下部の活動が低下しており、リラックスしていること、楽しんでいることが伺えます。

つまり、「かいてみよう!」も「きってあそぼう!」も子どもの脳にとってはほぼ同じ、いずれも「遊び」、「手を使った遊び」になっているのです。これはとても大事なことです。幼児期の脳の発達を見てみると、「何かが出来るようになること」にかかわる脳部位の発達はまだ先で、5歳までの時期に発達のピークがあるのは「何かを好きになること」にかかわる脳部位です。ですから、この時期には学習が遊びであることが大切なのです。「楽しいこと」「遊びのようなこと」が大事なのです。
またこの時期には体をコントロールすることと、頭を使うことがまだはっきりとは分離されておらず、混然としています。だから手を使うこと、前運動野や運動野を使うことが、頭を使うことの準備に位置づけられるのです。

読み物は大事

幼児にとって言葉も大事です。実際、語彙(ごい)に関係する脳部位と、顔の表情判断にかかわる脳部位の発達のピークも5歳前です。お母さんやまわりの人の顔に囲まれ、言葉をかけられて、幼児期の脳は発達していくのです。年中の「わらしべちょうじゃ」(図5)を読み聞かせしてもらっているときの脳活動をみてみましょう(図6)。

言葉を発する中枢(左のブローカ野)が強く活動しており、またその上方の言語的なワーキングメモリに深くかかわる背外側前頭前野の活動が高くなっています。読み聞かせといっても、子どもは心の中では声を出して読んでいるのがわかります。しかも頭を盛んに使いながらです。一方、右の側頭葉の活動が高まっており、ここはリズムや抑揚を感じ取ることにかかわっていますから、お母さんの読み聞かせの声は、言葉というよりリズム、抑揚として子どもの脳にとらえられ、それにのって子どもは自分で頭の中で読んでいるわけです。まさに読み聞かせがただ読んで聞かせるのではなく、読み聞かせの中で自主的な学習活動が目覚めている姿です。
同じ読み物でも「ともだちいっぱいはるだ!」(図7)のような、随所に想像を刺激する読み物だと脳活動が異なってきます。左のブローカ野や背外側前頭前野が活動を高めるのは同様ですが、こちらでは比喩の理解や想像性・創造性に深くかかわる角回(かくかい)の活動が両側で高まっています。「はるだ!」での発見をうながす工夫、想像をうながす工夫が功を奏しているわけです。

新刊の「きせつしんぶん」大判とかわら版の違いは?

今度の改訂で導入された「きせつしんぶん」はどうでしょうか?
年少・年中では大判(図9)、年長では読み物性の高いかわら版風(図11)にしていますが、その違いは脳にどう反映しているのでしょうか。
まず年中の大判での脳活動です(図10)。空間的な位置関係の把握にかかわる左の前頭葉の上部、右の頭頂葉の活動が高く、また空想的な想像にかかわる右の角回の活動も高くなっているので、子どもは大判の「きせつしんぶん」の世界に入り込んで、想像性が刺激されているものと思われます。また表情を読んだり、笑顔に囲まれると活動を高めやすい右の前頭葉の中部から下部でも活動が高まっており、キャラクターの表情によっても空想の世界が広がっていることが推察されました。

では年長のかわら版風「きせつしんぶん」(図11)ではどうでしょうか? その脳活動が図12です。大判の「きせつしんぶん」に比べ、左の言語野(げんごや)の活動が大幅に高まっています。空間的な位置関係を楽しみ、その世界に没入する状態から、大人のように言語的にその内容を理解し、また画像の面白さを味わう方向で脳活動が高まっています。
大人から見れば同じような課題でも、子どもにとっては、また子どもの発達段階によっては、その脳活動が大きく異なってくるわけです。

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