ヒゲおやじ先生の脳コラム

2017.12.21

お勉強は後々まで役に立つ

認知症はまだ先のことと思っている方はちょっと待った!今からの心がけが大事なんです。今回のお話を読んで、将来のお子さんのリスクを軽減させましょう。

三人に一人が認知的な問題を抱えるようになる

65歳以上の高齢者の認知症患者数の将来推計が行われています。それによると、2012年の日本の認知症患者数は462万人、65歳以上の七人に一人でしたが、2025年には約700万人、五人に一人になると見込まれています。認知症の前段階で、記憶力などが当該年齢と比べてかなり低い「軽度認知障害(MCI)」も、認知症患者の三分の二程度見込まれますから、2025年には、65歳以上の三人に一人が認知的な問題を抱えることになります。

※この記事は、「ほほえみお母さん&お父さん」2017年7月号に掲載されたものです。

それでも、認知症の発症率は低下している

このように書くと「認知症は増えている」と思われがちです。確かに高齢化の進展に伴って、認知症や軽度認知障害の方の数は増えています。しかし、実は認知症の発症率は下がっているらしいことが報告されているのです。
フラミンガムハートスタディという、マサチューセッツ州フラミンガムの住民を対象とした縦断的疫学調査が行われています。個々の住民の健康状況などをずっと追いかけていく調査で、元々は心臓血管疾患の発症抑制を狙ったものでしたが、1975年からは認知症の調査も追加されました。
ボストン大学などの研究チームは、60歳以上の5,205人を対象に、年齢と性別で補正し、四つの時期の認知症の5年発症率を算出しました。その結果は、第1期(1977~1983年)が100人当たり3.6人、第2期(1986~1991年)が2.8人、第3期(1992~1998年)が2.2人、第4期(2004~2008年)は2.0人と、時間を追って認知症の発症率は低下し、第1期に比べ第4期では44%も低下していたそうです。
認知症の発生には生活習慣病がかかわることが知られていて、確かに、肥満や糖尿病をのぞいた生活習慣病のリスクは経年で低下していましたが、それだけではこの認知症発症率の急激な低下を説明できなかったそうです。一方、この認知症発症リスクの低下は、学歴が高校卒業以上の対象者にのみ認められ、教育歴の影響が示唆されました。

教育年数の伸びが認知症抑制の主因か

ミシガン大学などの研究チームは、2000年から2012年にかけて米国の1万人強の縦断調査を行いました。年齢、性別でデータを調整すると、高血圧や糖尿病や肥満など、認知症の発症とかかわることが指摘されている心血管リスク関連事項が増加しているにもかかわらず、65歳以上の認知症有病率は11.6%から8.8%へと有意に低下していることがわかったのです。
つまり、生活習慣病のリスク低下が認知症の発症を抑制したわけではなく、教育の年数が伸びたことが認知症抑制の主因である可能性が指摘できるわけです。
また別の研究では、世界全体でアルツハイマー病を減らすのにどういった施策が役立つかが検討され、「学校を建てること」といった試算も報告されています。

後々のためにも頭を使うことが大事

かつて「計算なんか計算機でやればいい」と言われたこともありました。今では人工知能の発達にともなって、「思考や判断もAIに任せたほうがいい」といった論調も出てきています。そう見える側面は確かにあるのでしょうが、それでもしっかり頭を使って学んでおくことは、お子さんの頭の働きをよくするのはもちろん、後々の認知症予防にも役立ちそうです。

  • ポピー公式HPトップ
  • ポピー子育ておうえん隊
  • 幼児向け連動動画
  • 高校入試情報
  • ポピっこアプリ紹介
  • 公益財団法人 日本教材文化研究財団