篠原先生

2017.12.15

便利さの発達と脳

子どものころと比べると、便利になったものだなと感じることがありますよね。でも、便利さとは、脳が楽をすることでもあるようです。そんな時代に育つ子どものためにできることとは?

コンビニエントな時代

地図を見なくてもカーナビで目的地まで。
いつでもどこでも電話が使え、番号を覚える必要もありません。
計算機が計算し、漢字を覚えていなくても漢字が書ける。
先読み変換なんてのもあります。
料理を作らなくてもコンビニでOK。
最近では多品目で栄養バランス抜群のものすらあります。

コンビニエント(便利)な時代。
何かをするのに苦労が少ない時代。
無痛時代。
消費者の苦労や苦痛が少ないのが望ましい商品で、かゆいところに手が届き、痛くなる前に治療する、それが望ましいサービス。

便利さと前頭葉

その一方で、ロンドンのタクシーの運転手の脳は、記憶を作り出し、位置情報に関わる海馬が大きいことが知られています。
地図を覚えておいて、最適な道順を考えることが脳トレーニングになっているのです。

電話番号を覚え、かけるたびに思い出せば立派な脳トレになります。
暗算、筆算も前頭葉外側部を賦活させます。
漢字の書き順をきちんと思い出せば、頭頂葉が賦活して、書くことでさらに前頭葉も賦活します。
料理は段取り、複数の仕事をこなす前頭葉トレーニングです。

コンビニエント(便利)な時代、苦労が少ない時代、無痛時代とは、結局のところ脳、とりわけ前頭葉に楽をさせる時代なのです。

困難を乗り越えるために発達する前頭葉

前頭葉は、サルになってようやく巨大化し始め、ヒトでサルの3倍に達し、大脳の30%強を占めます。
進化史上、最後に現れた脳なのです。

個体の成長でも、他の脳に比べてゆっくりと育っていきます。
3歳までと、8歳までくらいに急速に成長するものの、20歳過ぎまでだらだらと育ちます。
どんな環境にも適応できる柔軟性を保つためです。

多少無理な環境が与えられ、それを乗り越えるほうが、前頭葉にとって自然なのです。
楽な時代は、前頭葉受難の時代でもあるのです。

手伝いをさせよう

この夏、国立妙高青少年自然の家は、小学生高学年を対象に、「やらせから自立へ~キャンプとお手伝いの旅」という3週間の体験プログラムを実施しました。
約2週間の野外体験と1週間の民泊です。
民泊では、地元の家庭に泊まり、お手伝いをします。

実は、国際比較によると、この国の子どもたちは、「お手伝いしなさい」ともっとも言われていません。
それもダントツに少ないのです。
逆に、朝日が昇るのを見たことのない子どもは異常に多くいます。
他人や友だちの家に泊まった経験も少ないという結果が出ています。

楽なほうがいい。
それが、時代の、歴史の結論だったのかもしれませんが、少なくとも子どもたちには、乗り越える困難な課題が必要だと思います。
かわいい子には旅をさせろ、です。
われわれは、このキャンプに参加した子どもたちの前頭葉活動を調べています。
詳細分析はこれからですが、おおむねよさそうです。

※この記事は、「ほほえみお母さん&お父さん」2006年12月号に掲載されたものです。

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