篠原先生

2017.12.14

なぜ明るい色を好むのか

折り紙で人気のない黒や灰色。単純に地味だからと思っていたら、視覚のしくみと深~く関わっているようです。今回は、そんな色についての好みと脳のお話です。

折り紙で、黒と灰色が残るのはなぜ?

折り紙で残るのは白や黒や灰色。
子どもたちに好きな色を聞いても、上位に来るのは、赤、青、ピンク、黄色などの明るい色ばかり。
どうしても子どもたちは明るい色ばかりを好むのでしょうか?

色を見分ける錐体(すいたい)細胞

わたしたちは、目から入ってきた光の信号を網膜で電気信号に変え、これを脳で傾き、形、色、動きなどとして再合成していきます。
網膜で光の信号を電気信号に変えるのが視細胞です。
視細胞には、明るい環境でないと活動しにくい錐体細胞と、薄暗がりでも活動できるかん体細胞があります。

錐体細胞は網膜の中心部に密に分布して、色(光の波長)に対して敏感に反応します。
ヒトの網膜には、赤錐体、緑錐体、青錐体が存在して、それぞれが主に赤、緑、青の光を吸収します。
このため、光の三原色も同じように赤、緑、青となります。
ただ、赤錐体、緑錐体は赤・緑に吸収スペクトルのピークがあるわけではなく、両者とも黄色寄りにピークがあるため、赤錐体、緑錐体の両方が反応することで黄色が識別されます。

白黒を見分けるかん体細胞

さて、錐体細胞は色を区別することができますが、光量が充分でないと働きにくい細胞です。
一方かん体細胞は色を識別できないですが、わずかな光でも感知し、形や動きを捉えることができます。
このため暗いところでは、物の形は判っても色ははっきりとは判りません。

ヒトのかん体細胞は、網膜の周辺に分布しているため、薄暗がりの視野の端で何かが動くと、それは白黒の動きとして感知されやすく、ためにお化けは白黒で、なかなか色つきにはお目にかかれません??

見ることは好きになること

さて、なぜ子どもたちは明るい色を好むのか、です。
以前、「見ることは好きになること」という下條先生の実験を紹介しました。
二枚の写真を交互に見せるとき、片側をわずかでも長く見せるとそちらのほうが好まれるという実験です。

この効果は、画面の中央で交互に見せても現れません。
左右で交互に、つまりそちらを向くという時間が長いと好みが操作されるのです。
その伝からすると、網膜の中心部に色を見分ける錐体細胞があるのだから、明るい色の方向に顔を向けるのが自然で、そのことが明るい色を好ませることになるのかもしれません。
もっともこのあたりは生い茂る葉っぱの中で色鮮やかな果実を見つける力の強い種が生き残ったなど、説明のしかたは多々あります。

いずれにしても、ヒトは明るい色を好むような生物学的な基礎をおそらく持っています。
そしてそれを対象化して、様々な好みや、芸術的なセンスが生み出されてきています。
自然なものといいもの、子どもたちにはこの二つを体験させてください。

※この記事は、「ほほえみお母さん&お父さん」2008年7月号に掲載されたものです。

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