ヒゲおやじ先生の脳コラム

2017.12.01

なぜ壁に顔が見える?

今月のおたよりテーマは「いい顔」がいっぱいですが、先生のお話も「顔」がテーマ。脳のはたらきを学べるだけでなく、お化粧のヒントも知ることができますよ。

※この記事は、「ほほえみお母さん&お父さん」2013年1月号に掲載されたものです。

あ、顔が!

夜、「出る」という噂の廃屋を探検。

VTRをスローモーションすると、窓に「顔!」。背筋がゾッとします。

私たちの脳は、社会生活を営む必要から、顔の区別がちゃんとつくように、紡錘状回(ぼうすいじょうかい)など顔認知にかかわる脳部位を特別に発達させています。私たちにとって「顔」は特別なものなのです。

そしてこの脳部位は、5歳前に発達のピークがあることが知られ、子どもにとって親や周囲のものの顔を覚え、その表情を読み取ることがいかに必須の能力であるかがうかがわれます。

その分、壁のちょっとしたシミを顔と認知したり、立ち込める煙に顔を見出したり、窓への映り込みが顔に見えたりしがちなのです。

見えなくても見える?

私たちはまた、これらの顔関連領域を使わなくとも人の表情を読むことができます。

たとえば視覚処理にかかわる大脳新皮質(だいのうしんひしつ)の視覚野(しかくや)が損傷していると何も見えないのですが、それにもかかわらず、嫌な表情をしているのか、いい表情をしているのかの区別ができたりします。

こうした現象は盲視(ブラインドサイト)と呼ばれています。私たちがものを見るときに当たり前に使う、「目」→「視床(ししょう・情報の中継点)」→「大脳新皮質の視覚野」という大脳新皮質経由のルートだけでなく、「目」→「視床」→「上丘(じょうきゅう)」→「扁桃体(へんとうたい・恐怖や顔表情判断にかかわる)」というショートカットルートがあるために起こると考えられています。

そして低周波成分(粗い画像)が特に後者をたどりやすいことも知られています。そのため、壁のシミなどは情報があいまいな分(周波数が低い分)、恐怖をさそいやすいのです。しかも、一回顔と認知してしまったら、紡錘状回などの力によっても顔にしか見えない。 目をそらしてまた見返しても「顔」、ますます「顔」。恐怖はつのる……。

その一方で「いい表情!」もまたショートカットルートで伝えられます。明るい感じ、元気な感じ、前向きな感じ。これらもまた大脳新皮質での認知以前に扁桃体に伝えられます。お化粧の役割はこの「いい感じ」の伝達です。

シュードネグレクト

ところで図を見てください。目、鼻、口を模式的に書いたものですが、上の顔と下の顔を比べて、どちらが笑っているように見えますか?どちらの方が困った表情に見えますか?

多くの人が上の顔の方が笑って見えると言います。下は困った顔。

私たちは、顔の右側、向かって左側の顔で表情を判断しがちなのです。こういうのをシュードネグレクト(疑似無視)といいます。見ているのに向かって右の顔が無視されるからです。

ならばお化粧で気合を入れるべきは顔の右側です。しかし残念ながら右側は鏡に映れば左側。私たちは大事な顔の右半分を無視して化粧しがちなのです。特に時間のないときはご注意ください!?

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