篠原先生

2022.04.05

味覚のしくみと好き嫌い

子どもは何かしら苦手な食べ物があるものですが、今回は味覚のしくみを中心に、好き嫌いについてもお話ししていただきました。興味深く、勉強にもなりますよ。

ヒトが味を検知するしくみ

動物の多くは進行方向に感覚器を集中しています。目、鼻、耳、舌、触覚など進行方向からの情報を素早く察知して、えさならすぐにそちらに向かい、敵や毒ならすぐに逃げ出すためです。
感覚器のうち、鼻と舌は化学物質の検知を行います。鼻は約400個の嗅覚受容体を持っていて、その組み合わせで膨大なにおいをかぎ分けます。舌には味蕾(みらい)と呼ばれる味覚センサーがあり、甘味、うま味、苦み、酸味、塩味の味覚受容体が味を感知します。
味覚受容体には大きく分けて二種あり、Gタンパク質共役型受容体とイオンチャネル型受容体があります。Gタンパク質共役型受容体には、生体にとって栄養源となるうま味や甘味などを認識するT1Rファミリーと、生体にとって有害でありうる苦味を検出するT2Rファミリーがあり、体や脳を動かすエネルギーのもとになる甘味の受容体はT1R2とT1R3から、体や脳をつくるタンパク質(アミノ酸)の受容体は、T1R1とT1R3からなります。

ピーマン嫌いの子が多い理由

子どもは大人と比べて体重1㎏あたりでみると、エネルギーは約2倍、タンパク質は約1.5倍多く摂取する必要があるので、甘味やうま味をより好む傾向にあります。
T2Rファミリーには多種類の受容体が含まれ、苦味物質を検出します。コーヒーや茶のカフェイン、チョコのテオブロミン、レモンのリモニン、グレープフルーツのナリンジン、セロリのアピイン、ビールのフムロン、食品の焦げのメライノジンなど多様な苦みを検知します。ピーマンの苦みはピラジンというアルカロイドと、クエルシリトンというポリフェノールからなります。
子どものうちは有害でありうる苦みを強く感知して避ける傾向にあるので、ピーマン嫌い、セロリ嫌いが出やすいですが、大人になるにつれ苦味受容体の感度が落ち、苦みをおいしさの大事な要素と感じられるようになります。
ちなみにピーマンのクエルトリシンは油に溶けるので、炒め物にすると苦みが減ります。ピーマンを切るとき縦切りにするとピラジンが出にくくなり苦みを抑えられるとか。

すっぱいの苦手

さて味覚受容体のうち、イオンチャネル型受容体は、細胞外のNa+(塩味)やH+(酸味)などのイオンを透過させるイオンチャネルとして働き、味物質を検出しています。
ざっくり言えば、塩味は体の調子を整えるミネラルのシグナル、酸味は腐敗したもののシグナルになります。すっぱければ、すべて腐敗しているわけではないですが、小さいうちは酸味を強く感じやすくすることで、腐敗したものを食べてしまうことを避けていると考えられています。
酸味に関しても苦みと同じように、大人になるにつれその感受性が落ちていき、おいしさの大事な要素になっていきます。

好き嫌いは致し方ない?

こうした味覚受容体の感受性には個人差があり、これが飲食の好みにつながっているようです。米・ノースウェスタン大学のマリリン・コルネリスらによれば、カフェインの苦さを遺伝的に感じやすい人はコーヒーを少し多めに飲み、薬のキニーネとプロピルチオウラシルの苦さを感じやすい人は、コーヒーをやや控えめに飲むのだとか。また、プロピルチオウラシルの苦さを感じやすい人は、大酒飲みになる確率が低いのだとか。
子どもの食の偏りは、まあまあ致し方ない部分もあるわけで、無理な修正は無駄なのかなと思います。
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