篠原先生

2021.12.08

頭の切り替え力と創造力

創造性が豊かな子に、というのは親の願いの一つですが、今回は、そのための大きなヒントが得られるお話です。お子さんの将来に向けてぜひ参考にしてください。

実行機能と創造力をみる研究

前回、「作業記憶」「行動の抑制」「頭の切り替え」からなる実行機能の力が強い子どもたちは、大人になったときに肥満や高血圧になりにくく、年収が高く、貯蓄が多かった。医師や弁護士など社会的地位の高い職業につきやすく、たばこや薬物に依存することも少なく、犯罪を起こす率も低かったというMoffittらの追跡調査を紹介しました。
今回は、この実行機能を鍛えることが創造性を育てることともかかわるらしいことを示した京都大学森口研究室のWang先生の、幼児での研究を紹介します。

「創造力」を測定するテスト

これからの時代、義務教育でも大学教育でも、新しい何かを生み出していく創造力をいかに育てるかが大きな課題となります。知識を詰め込むのではなく、新しい何かを創造する力を育てないと、新しい技術やサービスは生み出せず、経済の成長もないと考えられているからです。
〝Unusual Boxテスト〟は、まだ十分に言葉が使えない子どもたちの創造力(特に発散的思考)を測定するために、2013年に開発されたテストです。穴の開いたカラフルな箱、階段、棚、ひもなど、あまり見慣れないおもちゃのようなものが用意されます。そして子どもたちは事前のデモンストレーションなしに箱を使って遊びます。それを観察し、どんな組み合わせで遊ぶか、その数を測定します。

「頭の切り替え力」を調べる

自由に遊ぶ、創造性をもって遊びや組み合わせを生み出していく力には、実行機能のうちでは「頭の切り替え力」(頭のやわらかさ)がかかわりそうです。
この研究では「頭の切り替え力」を〝次元変化カードソート〟で調べています。子どもたちは、「形」か「色」の二通りで区別可能なテストカードを、最初は一方の次元(例:色)でソートし、次にもう一方の次元(例:形)でソートすることが求められます。このテストの成績が実行機能の発達の指標となります。

二つの力を幼児で調べた結果

Wang先生らは、未就学児26名を対象に、次元変化カードソートとUnusual Boxテストの二つのテストを実施して、脳の活性化を機能的近赤外分光法で調べました。その結果、二つのテストの成績の間には有意な相関は見られませんでした。
しかし、脳活動では「頭の切り替え力」と「創造性」の間に共通の基盤があることを推測させる結果が出ています。

脳活動では関係がみられた頭の切り替え力と創造力

Unusual Boxテスト(創造力テスト)では、子どもの前頭前野(ぜんとうぜんや)の外側の領域で脳が活性化していました。そして、次元変化カードソートで分け方を変えたあと、前頭前野の外側の領域を強く活性化させていた子どもたちは、Unusual Boxテストでも同じ脳の領域を活性化させていたそうです。
子どもは創造的思考を行う際にも、実行機能で使うような前頭前野外側領域を利用しており、幼児期に「頭の切り替え力」を鍛えておくことが、創造力(発散的思考)を育てることにつながりうるわけです。
手前味噌ですが、ポピーでは「頭の切り替え力」を鍛える問題を多用しています。どう鍛えたらいいのかがわかりづらい創造力を高めるのに、ポピーを活用しない手はありません。

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