篠原先生

2021.08.23

運動は苦手科目を底上げする!?

今回は運動と脳の働きについてのお話です。お子さんにとっても、おうちの方にとっても、運動の大切さがよくわかり、親子で体を動かしたくなりますよ。

幼児ポピーでは運動を重視

幼児ポピーでは以前から運動を重視しています。動物実験で、運動すると脳が重くなったり、アポトーシスという脳細胞の自殺が減ったりといったことが、報告されていたからです。私たちの調査でも、幼児期の「柳沢運動プログラム(楽しく遊びながら、体を支える力、跳躍力、懸垂力を鍛える、柳澤秋孝先生考案の体系的なプログラム)」により、幼児の切り替え力や抑制力にかかわるテストの成績が改善しました。ですから、幼児ポピーでもこの「柳沢運動プログラム」を展開し、おすすめしています。
一方で、全国学力テストと全国体力テストには相関関係があるものの、子どもの体力向上が本当に学力にプラスに作用するのか、実証的な研究では結論がバラバラです。プラスに作用したという報告もあれば、作用していないという報告もあります。
そこで北海道教育大学の森田先生らは、体力と学力に関する結果の違いは、科目によるもの、それも科目の得意・不得意によるのではないかと考え、調査しました。

中学生での調査

森田先生らは、469名の中学生を1年生時から3年生時まで追跡調査しました。調べたのは、全身持久力と国語・社会・数学・理科・英語の評定値です。今までの研究では、総合点、あるいは国語・数学・英語など各教科への影響が調べられていました。森田先生らはそこに結果の違いの原因があるのではないかと考え、5教科の最低評定値(苦手科目の得点)と最高評定値(得意科目の得点)を取り出して調べました。
このとき、体力以外で学業成績に影響を与えることが報告されているBMI(肥満度)、社会経済要因(両親の学歴と世帯収入)、放課後の勉強時間も同時に調査し、それらの影響を統計的に除去する方法をとりました。

体力が向上すると、苦手科目の成績がアップする

そして、その調査から、中学1年生から中学3年生にかけて体力が向上すると、苦手科目の成績が向上する、という結果が得られたのです。一方で、得意科目の成績は向上しませんでした。
運動が頭の働きをよくすることは中高年ではくり返し報告されています。有酸素運動で海馬(かいば)などでの神経栄養因子が増加し、神経幹細胞が増加して認知機能が改善する。筋トレでも同様の効果やカテプシンBの関与が考えられる。運動による骨への刺激でオステオカルシンが増え、これが認知機能を高める、等々です。
ですから、体力向上で学業成績の向上はわかりますが、なぜ苦手科目でそれが起き、得意科目では起きないのか、なかなかに謎です。
得意科目は自発的に学習するし、知識量も豊富なので、学習効果が出やすく、体力の影響を消すのかな、とは思いますが、今後の研究が楽しみです。

相関関係か因果関係か、見極める目を持とう

ここで大事なのは、体力がつくと苦手科目の成績が上がるという「因果関係」が示されたことです。こういう因果関係は、同じ人を追跡調査するという方法でないと導けません。

たとえば、「東大生は○○をしていた!」なんていうのは相関データです。それだけでは「○○をすれば学力がアップする」とは言えません。

○○をした人と、しない人をたくさん追いかけ、他に学力に影響しそうな要因を除去して検討しないと、因果関係はわかりません。
かしこい親御さんは、この辺の調査リテラシーをしっかり押さえておきましょう。

(ポピー編集部より)

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