ヒゲおやじ先生の脳コラム

2019.09.02

ガイドラインはあくまで参考に…

今回は、WHOが4月に発表した5歳未満対象のガイドラインに関するお話です。元になった研究についての紹介もあり、情報の見方についての勉強にもなりますよ。

WHOが発表した幼児期のガイドライン

世界保健機関(WHO)が5歳未満の子どもたちの運動やじっと過ごす時間、睡眠について、2019年版ガイドラインを発表し、報道されました。主なものをあげてみます。

映像
●1歳未満の乳児:映像装置は不要
●2~4歳:じっとして映像装置(テレビ、ビデオ、タブレットなど)と過ごす時間は1日1時間まで

運動
●5歳未満すべて:同じ体勢で1時間以上を過ごさない
●1歳未満の乳児:1日の起きている間の30分以上を腹ばいで過ごす(運動量を増やすため)
●1~4歳:1日に180分以上運動する
●3~4歳:180分以上の運動に加えて、1時間以上の「そこそこ~かなりきつめ」の運動を行う

睡眠
●必要な睡眠時間:生後0~3か月で14~17時間、4~11か月で12~16時間、1~2歳で11~14時間、3~4歳で10~13時間

証拠にはさまざまなレベルがある

このガイドラインは251の研究論文について証拠のレベルを精査し決めています。証拠にはレベルの高い実験的研究の総まとめから、レベルの低い観察的な研究まであります。ここでは251の研究のうち、高いレベルの証拠であると認められた研究を紹介します。

●基礎的な動作プログラムを行うことで、運動能力の総得点と跳躍力が向上。しかし、走力、ホッピング能力、キャッチング能力、蹴る能力の向上は認められなかった。
●言葉による指示に従って体を動かすエクササイズで、認知機能の向上が認められた。
●言葉の学習とは関係のない運動エクササイズで、地理に関する手がかり再生テストの成績は向上したが、「できるだけ思い出してください」というタイプのテストでは差が認められなかった。算数の成績や反応時間にも差は認められなかった。
●幼児は昼寝を奪われると、難しい課題にうまく参加することができにくくなり、成熟した自己制御が困難になる。
●昼寝を制限されると、潜在的記憶に関するテストの成績は変わらないが、具体的に示された認知課題の成績は低下した。
●ある動作を教えたあと、昼寝をした幼児は、寝ていない幼児に比べて、その動作の再現成績がよかった。
●昼寝をした幼児は、そうでない幼児に比べて、目的となる動作をたくさん、かつ早く再現できた。

ここにあげた証拠は、レベルが高いと認められているものばかりです。しかし、ご覧のように、研究の結果がほとんどそのままガイドラインになっているものはありません。ガイドラインは、さまざまな証拠から総合的に導き出されるものなのです。

ガイドラインは絶対的なものではない

WHOのガイドラインと言われると、絶対的な証拠が背景にあるように思いがちですが、必ずしもそうではない、よく引用されるからといって確定的とは言えないことを理解しておきましょう。ガイドラインは参考程度に、という認識を持ち、これに振り回されることなく、お子さんに合ったやり方を見つけていくことが大切です。

「よい性格」とは?

その上で「よい性格」を考えてみると、神経症傾向は低く、外向性、開放性、調和性、誠実性が高い、ということではないかと思われます。「神経症傾向」「外向性」「開放性」「調和性」「誠実性」は統計学的にはおおむね独立で相関関係がありませんが、それでも無理やり一次元化すると、「神経症傾向は低く、外向性、開放性、調和性、誠実性が高い」という共通因子が抽出できます。
これを「一般性格因子」と呼びますが、「一般性格因子」と「一般知能」が相関することも知られており、「神経症傾向は低く、外向性、開放性、調和性、誠実性が高い」は、一般的に「よい性格」「望ましい性格」と考えられます。

「よい性格」は育てられるか?

では「よい性格」は育てられるのでしょうか?
双子研究などを使った行動遺伝学では、神経症傾向の46%、外向性の46%、開放性の52%、調和性の36%、誠実性の52%が生まれながらの遺伝子の組み合わせで決まってくることが報告されています。そして家庭環境の影響とみなせる、共有環境の影響はどの性格因子に対しても、ほぼ0%です。
共有環境は正確に言うと、環境のうち双子を似させる方向に働く環境です。一方、非共有環境は双子を似せない方向に働く環境です。つまり、子どもにある環境を与えると、お互いが似てくるのではなく、むしろ似なくなっていく。同じ環境を与えても、その環境は個々人に違ったように作用するのです。
そうすると子どもを「よい性格」に育てようとするなら、「ある育て方」を模索しても無駄です。正しい育て方などないのです。子どもにいろんな環境を与え、よい性格に変わっていくような環境、刺激を、個々別々に探していくのが正しいわけです。子どもにさまざまな環境を与え、いい感じに伸びていく環境を探すこと、それが親の仕事です。

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