ヒゲおやじ先生の脳コラム

2019.06.13

子どもの性格を育てる

性格はいいに越したことはないとだれもが思うでしょう。

今回は、子どもをよい性格に育てるために必要な知識を、くわしく教えていただきました。

性格診断のほとんどはガセ

「子どもをよい性格に育てたい」。多くの親御さんはそう思っていることでしょう。少なくとも「悪い性格に育ってほしい」と願う親御さんは、まあ、いないと思います。
では「性格」とは何なのでしょうか? テレビや雑誌では、「一人で喫茶店でのんびり。コーヒーが来るまでに、あなたは何をしますか?」などと条件設定をし、「新聞や雑誌を読む」「ボーッと人を見る」「スマホでゲーム」「何もしない」などから一つを選ばせ、まことしやかな性格分類をしてみせる場面に出くわします。しかし、こうした性格診断はそれらしく見えますが、学術的な根拠はありません。
妥当性や信頼性がきちんと調べられていて、遺伝子解析や脳科学でも使用される標準化された性格テストは、ビッグファイブ(NEO‐PIなど)とTCIくらいのものです。それ以外の性格診断はおおむねガセとみて間違いありません。手相などの占いも同様で、統計に基づく…などとのたまいますが、統計学的に意味のある研究論文は皆無です。

ビッグファイブとは?

一方、ビッグファイブなどでは、質問項目を多数作り、多くの人に答えてもらって、それを因子分析などの方法で尺度化しています。そして、世界各地で調査が行われており、世界中どこでも同じような評価軸で性格を定量化できることが示されています。たとえばビッグファイブでは、性格を五つの軸の組み合わせで表現できることがくり返し示されています。
具体的には、人の性格は、①環境刺激やストレスへの敏感さ、不安や緊張の強さにかかわる「神経症傾向」、②社交性や活動性、積極性にかかわる「外向性」、③知的好奇心の強さや想像力にかかわる「開放性」、④利他性や共感性、優しさにかかわる「調和性」、⑤自己統制力や達成への意志、まじめさ、責任感の強さにかかわる「誠実性」の強弱の組み合わせで表現できます。
 

「よい性格」とは?

その上で「よい性格」を考えてみると、神経症傾向は低く、外向性、開放性、調和性、誠実性が高い、ということではないかと思われます。「神経症傾向」「外向性」「開放性」「調和性」「誠実性」は統計学的にはおおむね独立で相関関係がありませんが、それでも無理やり一次元化すると、「神経症傾向は低く、外向性、開放性、調和性、誠実性が高い」という共通因子が抽出できます。
これを「一般性格因子」と呼びますが、「一般性格因子」と「一般知能」が相関することも知られており、「神経症傾向は低く、外向性、開放性、調和性、誠実性が高い」は、一般的に「よい性格」「望ましい性格」と考えられます。

「よい性格」は育てられるか?

では「よい性格」は育てられるのでしょうか?
双子研究などを使った行動遺伝学では、神経症傾向の46%、外向性の46%、開放性の52%、調和性の36%、誠実性の52%が生まれながらの遺伝子の組み合わせで決まってくることが報告されています。そして家庭環境の影響とみなせる、共有環境の影響はどの性格因子に対しても、ほぼ0%です。
共有環境は正確に言うと、環境のうち双子を似させる方向に働く環境です。一方、非共有環境は双子を似せない方向に働く環境です。つまり、子どもにある環境を与えると、お互いが似てくるのではなく、むしろ似なくなっていく。同じ環境を与えても、その環境は個々人に違ったように作用するのです。
そうすると子どもを「よい性格」に育てようとするなら、「ある育て方」を模索しても無駄です。正しい育て方などないのです。子どもにいろんな環境を与え、よい性格に変わっていくような環境、刺激を、個々別々に探していくのが正しいわけです。子どもにさまざまな環境を与え、いい感じに伸びていく環境を探すこと、それが親の仕事です。

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