ヒゲおやじ先生の脳コラム

2018.10.19

五つのライフスキルと幸福度

今回は、どんなことが子どものしあわせにかかわってくるかというお話です。二つの研究結果のご紹介とともに、その受け止め方を教えていただきました。

勤勉性と好奇心が成績を決める

以前このコラムで、オーストラリアの大学の研究を紹介しました。大学生の成績は知能(IQ)以上に性格で予測できるというものでした。具体的には勤勉性(誠実さ)と好奇心(開放性)が高い方が成績がよくなり、その予測の正確さはIQの4倍にも及ぶとのことでした。

誠実さ、粘り強さなどがしあわせにかかわる

最近、ロンドン大学のアンドリュー・ステップトーらのチームは、50~102歳のアメリカ人8843人について、五つのライフスキルと、経済状態、心理的状態、社会的地位、健康状態との関係を調べました。
五つのライフスキルとは、「誠実であること」「情緒的に安定していること」「粘り強いこと」「楽天的であること」「自分をコントロールできている感覚(自己効力感)を持っていること」です。これらは、遺伝的な影響はあるものの、学習によって獲得しうる、高めうるものであるととらえて「ライフスキル(生活技術)」などと呼ばれます。
経済状態、心理的状態、社会的地位、健康状態については、収入や、うつのスコア、社会的階層、あるいは、強固な社会的関係を形成する能力や、今後の経済的見通し、慢性疾患の有無、社会的孤立の度合いなどをみました。
そうして調べた結果、持っているライフスキルの数が多くなると、すべての領域で結果が向上したそうです。誠実性、情緒安定性、粘り強さ、楽天性、自己効力感などを身につけておくことが、子どもたちが高齢者になったときのしあわせ度を高めてくれそうなわけです。

社会的孤立には遺伝もかかわる

一方、ケンブリッジ大学のジョン・ペリーらは、孤独感、他者とのかかわりの頻度、そのかかわりの質(秘密を打ち明けられるかなど)について、英国バイオバンク研究参加者48万7647人に質問し、参加者たちの遺伝子を調べました。
その結果、ゲノム上の15か所の座位における遺伝的変異が、社会的孤立に関連していることがわかったそうです。しかも、この遺伝的変異が、神経症傾向や主観的幸福感、BMI(肥満の指標)にも影響していたとか。
つまり、社会的孤立、メンタルヘルス、心血管代謝の健康(過度の肥満があると損なわれる)の間には、遺伝的形質が媒介している可能性があり、社会的孤立がメンタルヘルスの悪化や肥満の原因であるとは言い切れない可能性があるわけです。
 

子のしあわせのため親が持つべき感覚は?

また、五つのライフスキル―誠実性、情緒安定性、粘り強さ、楽天性、自己効力感も、一種の性格だったり、行動特性だったりするので、こちらも30~50%程度は遺伝の影響があると考えられています。ですから、だれもが同じようにライフスキルを高められるわけではないし、だれもが同じように社会的孤立、メンタルヘルス、心血管代謝の健康を改善できるわけではないのです。
同じような働きかけをしても、ライフスキルが伸びやすい子もいれば、伸びにくい子もいる。孤独を好む子もいれば、メンタルに問題を抱えやすい子もいる、心血管代謝の健康問題を抱えやすい子もいる、そういう多様性を前提とした感覚をしっかり持ったうえで、ライフスキルを伸ばそうとする。親が持つべき感覚はそうしたものだと思います。

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