ヒゲおやじ先生の脳コラム

2018.03.12

「10分よりそい」は、創造力と集中力を高めます

ポピーでは、お子さんがポピーに取り組むときにおうちの方がちょっとかかわる「10分よりそい」を推奨しています。おうちの方がちょっとよりそうことで、子どもの脳の働きは変わるのでしょうか?「ポピっこ」監修の篠原先生に調べていただきました。

『ポピっこ』は、まずは親子で

幼児ポピーは、まずは親子で一緒に学習することをお勧めしています。その根拠の一つは、イギリスのスーザン・ウォーカーのジャマイカにおける長期調査報告です。ジャマイカでは、以前から幼児期に身長や体重の伸びが少ない子は、その後の発達がかんばしくないという調査結果がありました。そこで、低栄養になりやすいと考えられる低所得家庭の乳児に、粉ミルクを配給する事業を行うことになったのですが、ウォーカーはその際、粉ミルクを届けるだけでなく、親を交えての遊びを行ってはどうかと考えました。

子どもたちをⒶ「ミルクの配給だけ」、Ⓑ「ミルクの配給と2時間の遊び」、Ⓒ「2時間の遊びだけ」、Ⓓ「何もしない」の4グループに分けて2年間過ごし、その子たちが17、18歳になったときに知能、語彙数、読解力、図形描画力、数学力などを調べました。その結果、「親子での遊び」が効果的であることがわかりました。ⒷとⒸは、Ⓐに比べて、これらのスコアが高かったのです。さらに22歳まで追跡調査を行ったところ、乳幼児期に遊んでもらった子どもたちは知能が高くて、一般知識が多く、教育歴が高いだけではなく、大きな喧嘩歴や暴力行為が少なく、うつになる率も低かったそうです。

子どもにとっては栄養以上に親子遊びが大事であることを示唆する調査結果になりました。また、別の調査では、単なる読み聞かせより、親子であれこれ言いながら双方向で行う読み聞かせの方が、子どもの知能を伸ばすことが報告されています。

ですから、ポピーも親子で「楽しく」「遊ぶように」「双方向で」取り組むことが、子どもたちの将来に役立つと考えます。

ポピーの『あかどり』と『あおどり』は、おもしろ特集、からだ遊びなど、好奇心を刺激する作業がたくさんの『わぁくん』と、あたまを使うことが好きになる問題で、知的活動の基礎をしっかりつくることを目指す『ドリるん』の2分冊です。『わぁくん』は遊びに近いので親子で取り組むほうがいいと思うが、『ドリるん』の場合は、ひとりで取り組んでこそ、知的能力が向上するのではないか、手助けなしで自力で考えてこそ頭がよくなるのではないか、といった疑問もわいてきます。

そこで、2016年、2017年と、年長さんを対象に、親子で『ドリるん』を行う場合と、子どもがひとりで『ドリるん』を行う場合で、脳活動に違いがあるのかを調べました。半分の被験者には「ひとりで」→「親子で」の順で、残りの半分の被験者には「親子で」→「ひとりで」の順で『ドリるん』に取り組んでもらったのです。

創造力が発揮しやすくなる

まず、2016年の結果です。図1は子どもが『ドリるん』をひとりで行っているときの脳活動の一例で、図2は親子で行っているときの一例です。図の赤丸、側頭頭頂接合部(そくとうとうちょうせつごうぶ)という脳部位で活動に差が見られました。全体をまとめて評価しても、ひとりで『ドリるん』を行っている場合より、親子で行っている場合のほうが、側頭頭頂接合部の活動が高くなっていました。

側頭頭頂接合部は、裏の意味を読むことや、創造力、想像力にかかわる脳部位で、ここが損傷すると比喩が理解できなくなります。この部位の活動が親子でのときのほうが高かったので、親子で一緒に行うほうが、創造力や想像力が発揮しやすくなるのではないかと推測されました。
 

課題そのものに集中できる

2017年のターゲットは内側前頭前野(ないそくぜんとうぜんや)でした。図3、図4の赤丸の部位です。


内側前頭前野はデフォルトネットワークと呼ばれるものの一部です。デフォルトネットワークはぼんやりしているときに活動が増す部位で、内的記憶と自意識を結びつけ、ひらめきを促進させます。散歩しているとき、お風呂に入っているとき、ぼんやりしているとき、ふと抱えている課題の解決の糸口が見えることがあるのは、このネットワークの活動によります。

大事なネットワークではありますが、何かを一生懸命こなしているときには、このネットワークの活動はじゃまでもあるので、集中するほどにこの部位の活動が鎮静化します。

「子どもが『ドリるん』をひとりで行っているとき」(図3)より「親子で行っているとき」(図4)のほうが内側前頭前野の活動は鎮静化しやすい傾向にありました。

ひとりで行っているときは、一見集中しているようでも「一生懸命やっている自分を見ている」状態になっていて、逆に親子で行っているときは、課題そのものに集中しやすくなっていると言えるでしょう。おうちの方の「よくできたね」などの声かけのおかげで、「自分はうまくできているかな?失敗していないかな?」と自己観察をしなくて済むからではないかと考えられます。

様子を見ながら、少し声かけを

同時に計測したおうちの方の脳活動からわかったことがあります。脳は前頭葉の右側で画像的な処理をして、左側で理屈的な処理をするのですが、実験中、おうちの方は一度右側の活動を高めてから、左側の活動を高めていました。

こうした脳活動から、おうちの方はお子さんの様子や課題の進行具合を観察し、観察内容に応じて考えた上で、何らかのアドバイスをしているということがわかりました。

迷路に取り組むときに、おうちの方が声をかければ、お子さんは単純に線を引くだけではなく、「こっちに行ったらどうなるだろう」などと、いろいろなことを考えるようになります。文字を覚える場合でも、「〝あ〟という字がつく言葉は何かな?」という声かけで、お子さんにいろいろと考えさせることができます。ずっと横にいてアドバイスをし続けるのではなく、お子さんの様子を見ながら適宜アドバイスを行っていくことが望ましいのですが、多くのおうちの方はそれができているのではないかと思います。

おうちの方が少しかかわることで、楽しくリラックスして集中でき、お子さんの創造力も鍛えられます。最初の少しの時間だけでいいので、かかわってあげてください。

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