ヒゲおやじ先生の脳コラム

2018.02.13

やる気ニューロンと移り気ニューロン

今回は、やる気と移り気(思考の切り替え)のお話です。『ポピっこ』をやりながら、お子さんをほめてやる気を高め、思考の切り替えのトレーニングをしていきましょう。

リハビリからわかる学習初期のやる気の重要性

脊髄損傷(せいずいそんしょう)や脳梗塞(のうこうそく)の患者のリハビリテーションでは、意欲を高くもつと回復効果が高いことが臨床の現場で経験的に知られています。逆に、脊髄損傷や脳梗塞後にうつ症状を発症すると、運動機能の回復を遅らせることも知られています。
生理学研究所の西村先生らはこの仕組みの一端を明らかにしています。脊髄を損傷したサルの運動機能回復の早期には、やる気やがんばりにかかわる側坐核(そくざかく)が、運動機能にかかわる運動野の活動を活発にして、運動機能の回復を促進しているというものです。
側坐核は、この連載でやる気の中核として紹介した線条体(せんじょうたい)の腹側、腹側線条体にある神経核です。リハビリの初期にこの側坐核の活動を止めてしまうと、リハビリ効果が消失するというのです。一方で、普通に運動できているサルの側坐核の活動を止めても、運動に支障は生じないそうです。
リハビリの初期ではやる気やがんばりが必須ですが、十分リハビリができてきたり、慣れた事柄になったりしたら、それほどやる気やがんばりは必要なく、ルーティンでいけるということでしょうか。
これは学習でも同様で、ほめると側坐核の活動が高まることが知られていますから、新しいことにチャレンジする学習の初期では、おうちの方が横にいて、がんばりやうまいやり方をこまめにほめることが肝要です。

移り気ニューロンとは?

さて、慶応大学の田中先生らは、やる気やがんばりにかかわるニューロンは、腹側線条体(側坐核)の外側部に存在することを明らかにしています。そして、側坐核の内側部には、「やる気ニューロン」とは真逆な働きをする「移り気ニューロン」が存在することも明らかにしています。
この「移り気ニューロン」が活性化すると、すべきこととは異なる無駄な行動が増えるのだそうです。逆に「移り気ニューロン」の活動を抑えると、目標とは無関係な行動をしなくなり、目標に合致する行動をとりやすくなるそうです。
集中するということには、「やる気ニューロン」の活動を高め、「移り気ニューロン」の活動を抑えることが、強くかかわるようです。「やる気ニューロン」の活動が低下しても集中力は失われますし、「移り気ニューロン」の活動が高まっても集中力が阻害されるというわけです。

移り気ニューロンは柔軟な思考や行動に不可欠

では「移り気ニューロン」などないほうがいいかというと、それは違います。このニューロンがあるおかげで、何かの方法で課題をこなしている際、それでうまくいかないときの切り替えができるのです。柔軟な思考や行動には「移り気ニューロン」の活動が不可欠です。
幼児ポピーでは行動や思考の切り替えが必要な課題をたくさん採用しています。同じやり方のままではワナにハマってしまうような問題や、今の自分のやり方を客観的に理解していないとうまくできない問題もたくさんあります。
行動や思考の切り替えには内側前頭前野などがかかわることが知られていますが、ポピーを行っているときにはここがよく活性化します。
おうちの方にほめられながら、前頭前野を活性化し、「やる気ニューロン」と「移り気ニューロン」の切り替えを学習していく。それがポピーです。

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