ヒゲおやじ先生の脳コラム

2018.01.12

親はあがいたほうがいい?

今回は、「親の背を見て子は育つ」という言葉を実証するような研究報告のお話です。子どものやる気を育てていくには、親の姿も大切なようですよ。

ほめるなら、素質より努力

スタンフォード大学のキャロル・ドゥエックらが行った、小学5年生400人余りを対象とした実験の報告に、次のようなものがあります。
テスト後に直近の努力や行動をほめられたグループはIQが30%伸び、一方、素質や能力をほめられたグループは成績が20%低下したというのです。努力をほめられるとさらに努力を認められようとがんばるが、素質をほめられると、「素質がいい」「頭がいい」「天才」などの評価を守るために間違うことを恐れるようになる。そして、できることしかしなくなる、と。
この研究は、もともと「原因帰属」の実験として知られていました。ものごとの原因を「自分以外の他人、または環境にある」と考える傾向の強い人は、その後伸びにくく、「自分にも責任の一端がある」と考える人は自己改善をして伸びていくというのです。
それが近年、教育経済学(どんな力を伸ばしておくことが将来の年収や地域のGDPの向上につながるかなど、教育を経済の側面からとらえる学問)で注目され、また努力や行動をほめることがやる気アップにつながるとの脳科学的解釈が出てきて、再注目されています。

※この記事は、「ほほえみお母さん&お父さん」2018年1月号に掲載されたものです。

「やればできる」と「自制心」

教育経済学では、幼児期から小学生期に伸ばしておくべき非認知的能力として二つの力が指摘されています。一つはドゥエックらの実験で導かれた「やればできると本気で思い、努力する態度」、もう一つは「自制心」です。
後者もスタンフォード大学の実験で、ウォルター・ミッシェルのマシュマロ実験から導かれたものです。4歳児の目の前にマシュマロを置き、「15分がまんできたらもう一つあげるね」といって部屋を出ていき、様子を観察します。その12年後、40年後を調べたところ、がまんできた子のほうが、そうでない子より大学適性テストの成績が良かったり、学校や家庭での問題が少なかったり、貯蓄が多かったり、収入が高かったりしたのです。
ただし、ここでいう「自制心」は、ただひたすらがまんするということではありません。目の前に欲望の対象があると流されてしまうことを自覚し、見ないようにするとか、別のことをするとか、欲望を受け流すすべをウォルター・ミッシェルは「自制心」と呼んでいます。

子どもの前であがこう

マサチューセッツ工科大学のレオナルドらは、15か月の赤ちゃんに親ががんばる姿を見せると、赤ちゃんもがんばるようになることを最近報告しました。
①おもちゃ箱などからおもちゃを親が30秒かけて苦労して取り出す様子を2回見せる、②10秒でたやすく取り出す様子を6回見せる、③何も見せない、の3グループに赤ちゃんを分け、①~③を行った後、赤ちゃんに大きなボタン付きのおもちゃを渡します。このおもちゃは、がんばって押すと音が鳴ります。
その結果は、大人が努力する姿を見た①のグループは、簡単に取り出す様子を見た②のグループより、赤ちゃんがボタンを押す回数が約2倍多かったとのこと。
親が子どもの前であがくことが、子どもの自制心や努力する心を育てる上でよろしいようです。
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