篠原先生
よい記憶法とは?
今回のお話は、そんな大人にも、やがて学校にあがるお子さんにも大変参考になりますよ。
海馬とは?
みなさんの耳の横っちょあたりの脳の奥に、小指大ほどの海馬という器官が、左右にひとつずつあります。
海馬はタツノオトシゴ、形がタツノオトシゴに似ているので海馬というのだとか。
ご存知の方も多いと思いますが、この海馬が記憶をつくるのに深くかかわります。
脳科学では有名なHMさんは、切除手術で海馬を含む脳部位を取り除かれて以降、新しいことを覚えられなくなりました。
くり返す、つなげる
この海馬では長期増強という現象がよく観察されます。
脳細胞をちょっと刺激すれば、ニューロン(脳細胞)が活動するのは当たり前なのですが、くり返し刺激を与えたり、ぐっと強い刺激を与えたり、同時に複数の個所から刺激を与えると、わずかな刺激でも長期間活動が続くようになります。
これが長期増強、記憶の素過程(そかてい)だと考えられています。
だから、くり返すことで記憶が定着したり、強烈な出来事は忘れにくかったり、つながりを持って覚えるほうが忘れなかったりするのです。
学習後12時間がみそ?
さて、この海馬での長期増強現象は、学習後12時間したところで、海馬中で脳細胞を育てる物質、BDNF(脳由来神経成長因子)が発現すると、さらに永続化することが知られています。
そしてこの永続化にドーパミンの活動がサポートするらしいのです。
ドーパミンの働きを邪魔すると、記憶の永続化が起こらず、促進すると起こるのです。
ドーパミンは興奮したり、快感を覚えたり、達成感を得たり、それからほめられても活動します。
ネズミの話ですから、人でどこまで言えるかはわかりませんが、学習後12時間たったあたりで、ドーパミン系を興奮させるように楽しく復習することが、記憶の永続化を強く促すことになります。
予習、学校、復習
12時間といえば、おおむね「予習→学校」、もしくは、「学校→復習」のサイクルですから、昔から言われているように予習復習は大事です。
特にそのかなめになるのは、当たり前ですが、学校での学習です。
ここが抜けてしまうと、何をかいわんや。
学校の授業を大事にし、その中身にいちいち感心することが、なんだかんだ言っても記憶定着を促進します。
同じように、家での予習復習も、学ぶ中身に感心しながら、心をこめて。
学校の授業をおろそかにして、効率を求めるのは、非効率きわまりない話です。
理解こそ最高の記憶法
また、海馬は五感の情報やこれまでの記憶を束ね、つなげることで記憶をつくります。
だから、ごろ合わせとかのほうが、ただ覚えるより覚えやすかったりするのです。
しかし、最高で無駄のないごろ合わせ(関連付け)は「理解」です。
ちゃんと理解するとは、意味ある学問的なつながりをつけること。
まっとうな学習こそ、記憶を促進します。
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