ヒゲおやじ先生の脳コラム

2017.12.06

がまんは毒でもあるのでご自愛を

日常の場面でのがまんは、しつけとしても大切なことですよね。でも、受け入れがたい体験をしたときは…。今回は、そんな場合についてお話しくださいます。

がまんは毒

こんな実験があります。

1. チョコ好きでドーナツ好きな被験者の目の前に、おいしそうなチョコレート・ドーナツを置きます。
2. それから、ドーナツに手をつけず数分間がまんするよう指示します。
3. その後、被験者たちを屈辱的な目に合わせます。

ひどい実験ですが結果はきれい。指示を守ってドーナツに手をつけなかった被験者の方が、つい食べてしまった被験者より、屈辱に対して攻撃的な反応を示しました。同じように、がまんや自制心を必要とする課題を被験者に与えると、怒りをテーマにした映画を選びたがったり、怒りの表現を好んだり、怒った表情を長く見がちになったりします。がまんは立派なことですが、その後の怒りの抑制を困難にし、さらに「怒り」に対する関心や興味を高めてしまうこともあるのです。

悪態は痛みを和らげる

一方、悪態をつくことはとても立派なこととは言えませんが、痛みを和らげる効果が報告されています。身体的な痛みで活性化する脳領域が、社会的拒絶の経験によっても活性化することが報告されていますから、悪態をつくことは心の痛みの緩和にも役立ちます。

30年以上前になりますが、精神科医E・キューブラー=ロスの『死ぬ瞬間』という本が流行りました。当時、ガンは不治の病で、ロスはガンを告知された患者さんを観察し、ガンだということ、死んでゆくということを受け入れるプロセスをまとめました。

「そんなはずはない」「冗談だろう」「(告知をした医者に対して)あんなのやぶ医者だ」などと事実を認めない、あるいは「自分は大丈夫」とカラ元気を出す「否認」。「なんで俺がガンにならなきゃいけないんだ」「あいつが悪い」「あのとき大丈夫だと言ったじゃないか」といった「怒り」。「全財産をあげるから間違いだと言ってくれ」「寄付するから治してくれ」といった「取引」。どっぷり落ち込み、活動性を失う「うつ」。それから「受容」。

「ロスの五段階」といいます。必ずしもこの順番でことが進んでいくわけではありませんが、がんに限らず、どうにも受け入れがたい理不尽で、きつい出来事があると、わたしたちの心は、「否認」「怒り」「取引」「うつ」などを行き来して、どうにかこうにか事態を受け入れていくのです。

※この記事は、「ほほえみお母さん&お父さん」2011年9月号に掲載されたものです。

ご自愛ください

前向きに、自分を受け入れ、ポジティブシンキング。苦難を乗り越えた人たちはそう言います。ロスの五段階を支えるのは「希望」だそうですから、なるほどと思いますが、みなさんいきなり「そこ」にたどり着いたわけではありません。泣いたりわめいたり、思い切りへこんだり、取引を持ちかけたり、怒り狂ったりした時期があったはずです。

無理するなと言っても無理な話ですが、それでもご無理なさらず、泣くときは泣いて、怒るときは怒って、落ち込むときは落ち込んで、一人で抱え込まず周りに頼り、それでもなかなか回復しない時にはお医者さんにも相談して、日々をお過ごしください。ご自愛ください。

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