ヒゲおやじ先生の脳コラム

2017.12.05

遺伝の影響の度合い

「トビがタカを生む」だったら…、なんて考えたことありませんか? 実際にトビがタカを生むことはありませんが、タカのように育つことはありそうですよ。

教育投資は意味がありますか?

先日、経済的な損得がメインテーマのテレビ番組から問い合わせがありました。ズバリ、教育にお金はかける意味があるのか?というのが質問でした。

「みんな教育にお金をかけている」「しかし、もし頭の良さや学業成績、あるいは社会的成功が、生まれたときからほぼ決まっているのなら、お金をかける意味がないのではないか」「実際、どうなんでしょう?」

そこでお話ししたのが遺伝率です。知能や学業成績は、氏で決まるのか、育ちで決まるのか、その一つの答えが双子研究から導かれる遺伝率です。たとえば、たくさんの一卵性双生児と二卵性双生児に知能テストを行います。すると一卵性双生児の方が成績の一致度が高くなります。一卵性双生児はDNAが一致していますが、二卵性双生児は普通の兄弟と同じで半分一致しているだけだからです。そこで、一卵性双生児の一致の度合いから、二卵性双生児の一致の度合いを引き、二倍すると遺伝率が計算できます。

それでみると、知能指数の共通因子にあたり、大人になってからの社会的成功に深くかかわることが知られている一般知能(IQg)の遺伝率は55%(Prominらの値、研究によって異なります)。うーん、やっぱり遺伝はある、でも育ちもあるな、というわけです。さらに、言語的な推論力が50%、空間的な推論力が40%、学業成績は38%ですから、教育環境を整えることは大切だし、本人の努力は当たり前ですが意味が有ります。

※この記事は、「ほほえみお母さん&お父さん」2011年11月号に掲載されたものです。

気づくことと根性と

ちょっと驚くのは記憶力で、遺伝率は30%程度にまで下がります。記憶力なんて生まれつきと考えがちですが、さにあらず。後天的な工夫や努力で大きく変わりますし、復習のタイミングなど自分に最適な記憶法に気づくことは大切です。

たとえば、同じ30分学習するにしても、10分やって5分休むを三回くり返した方が(分散化した方が)記憶の定着がよく、また分散間隔を長くしていくのが効果的なことが知られています。記憶力がいいといわれる子の多くはそのことをなんとなく感じ取っていて、学習計画に反映させたりしているのです。

その代表格がDWM。DはDay、WはWeek、MはMonth。翌日、1週間後、1カ月後と分散させ、かつその間隔をあけていく学習計画法であったり、残り期間を6で割ったタイミングでの復習だったりするのです。また、何回くらいやれば覚えるのか、覚えにくいものを優先しようなどの工夫が遺伝に勝っていくのです。

認知心理学者のエリクソンは「優れた能力を発揮する人と標準的な大人の差は、遺伝子に決められた才能によるものではない。この差は、生涯にわたって行われる計画的な努力によって生じる」と言い、grit(気骨、意志力)がパフォーマンス向上に大きな役割を果たすことを実証的に示しています。また、心理学者ダックワースらは、綴り字の全国大会(漢字選手権のようなもの)に参加した190人のデータを分析し、才能競争のように見えるこの大会に勝利する者は、やはりgritの強いものであることを示しています。

努力は無駄ではないし、それどころか努力こそ最重要なのです。

性格は家庭環境のせいじゃない?

さて、遺伝率でちょっと面白いのは性格面です。神経症傾向とか外向性とか、男性的・女性的、順応性、柔軟性、衝動性などの遺伝率は4~5割なのですが、残りの環境影響のうち共有環境(ほぼ家庭環境)の影響が極めて小さいのです。学業などは環境影響のおおむね半分が共有環境の影響ですが、性格面はほぼ0、計算上負になることすらあります。家族で暮らすと家族内の役割分担ができ、性格的な散らばりを大きくするのが一因だと考えられています。ですから、子どもが「私の性格は親の育て方のせいだ」などと言い出したら、それは間違いだというわけです。

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