ヒゲおやじ先生の脳コラム

2017.12.01

いま大切なのは「好きになること」

幼児ポピーの監修・指導をされている篠原先生は、本誌「ヒゲおやじ先生の脳コラム」(奇数月連載)でもおなじみです。毎回コラムで子どもと脳の興味深い話をしてくださいますが、今回は幼児期に大切なことは何か、基本となるお話を伺いました。

5歳前に発達のピークがある脳部位とは

2002年ぐらいから、脳のどの場所がどのように発達するか、子どもたちを1年から2年おきにMRIを使って調べる研究が始まり、その蓄積データから、脳は部位によって、おおよそ三つの発達のパターンがあるということがわかりました。5歳前に発達のピークがあるところ、7歳くらいから12歳くらいがピークになるところ、そして思春期からだらだらと発達するところです。
5歳前に発達のピークがあるのは、好き嫌いや価値判断に関係するところです。「何かを知っている」「何かが好き」ということを決めていく場所がまずできてきます。それと同時に、顔の表情判断と語彙(ごい)にかかわるところも発達します。直接的には、お母さんの顔をちゃんと覚えて区別でき、お母さんの言葉から言葉を学んでいくことが主軸になるところです。親子のかかわりの中で何かを学習することに関係するところが発達するんです。この時期には親子の共振(無意識的な部分で融合するような感覚体験)関係が必要であり、いろいろなことを好きになることが大切になってきます。

※この記事は、「ほほえみお母さん&お父さん」2014年4月号に掲載されたものです。

「親子で一緒に」が「好きになる」ポイント

頭をしっかり使うこと、体をしっかり動かすこと、人とのコミュニケーションは、生涯に渡って必要になることですよね。年をとってからの認知症予防まで考えると、この三つを好きになることはとても重要です。『ポピっこ』はそれを主軸に考えて、親子で一緒に読んだり、感じ合ったり、同じものを見つめる機会を提供したり、また、それを使って散歩してみよう、まわりを観察してみようという試みも行っています。
親子でそうしていると、オキシトシンという愛着や愛情に関係するホルモンが分泌されます。お母さんにだっこされたり、声を聞いたりすると分泌しやすいことが知られている脳内物質ですが、これがドーパミン(快感ややる気に関係する脳内物質)の分泌を促進したり、その働きを強めたりするので、親子で一緒に頭を使い、体を動かすことが、頭を使うこと、体を動かすこと、人とかかわることが、好きになっていく基礎になるんですね。

楽しくやることがやる気につながる

もう一つ、好きになっていく基本は、コンテンツそのものが楽しい、遊び的要素をたくさん含んだものであることです。幼児期の脳活動では、遊ぶことと学習することは区別されないので、遊びの中で楽しいと思いながら頭の使い方を覚えていくことが大切になります。
それも、自主的、自発的にやったほうが効果が大きいでしょう。「~しなさい」「~しちゃダメ」という命令形では、扁桃体(へんとうたい)という恐怖反応に関係する部位が活動しやすく、自主的に何かをやって楽しいときは、線条体(せんじょうたい)という行動と快感をマッチングさせる場所の活動が高まります。そして線条体が活動を高めるということがやる気の根っこなのです。 「いいことをしたらほめる」を何度も何度もくり返すと、線条体で行動と快感が結びついて、「いいことしようかな」とちょっと思っただけで、線条体の活動が予測的に高まるということが起きます。これがやる気の正体です。ですから、頭を使うこと、体を動かすことが好きになるためには、コンテンツそのものが楽しく、それをするとうまく達成感がえられるようになっていることが大切なのです。
また、線条体でドーパミンが働くと、パフォーマンスが急速に上がることが知られています。楽しくやる気をもってやるとリハビリ効果が高いことが知られていますが、楽しくやったほうが何事もスムーズにスピーディに身につくのです。ですから、幼児期にその根っこを作っておくことは大切ですね。小学校中学年くらいになって勉強をやらされる状況になったときでも、なぜか楽しくできちゃう、そうなってほしいですよね。

一つ叱ったら、ほめるを三倍

「~しちゃダメ」を言うなというわけではありません。「飛び出しちゃダメ!」など、必要なときはきちんと言ってください。扁桃体がはたらく禁止系の命令は、一発で学習できるし、よく効くようにできています。生き物にとって、いいえさがよくとれる場所を覚えることは大切ですね。けれども、そこへ行く途中で敵に襲われそうになったとしたら、それは生き物にとってより重要なことで、しっかり強く覚えるように生き物の脳はできています。進化の過程から禁止の命令は強く効くからこそ、いいことをしたらほめるときのようにこまめに叱ったらダメなわけです。
叱ることは大切ですが、効きすぎるので、望ましい行動をほめるということとセットで考える必要があります。一度叱ったら三倍ほめる。叱るとほめるの比率を1対3にするとバランスがとれるということが、神経経済学という学問の研究で実証されています。それにちょいほめがお得なこともわかっています。ですから「ちゃんと手が洗えたじゃん」なんていうことでもいいので、ちょこっとしたことをこまめにほめてください。
『ポピっこ』は、そういうちょいほめをしやすいようにも作っています。「そこ違う」があっても、すぐ「いいじゃん」が言えるところがあるので、こまめに「いいね」を言ってあげてください。小学校に上がれば、みんな嫌でもネガティブな評価にさらされます。だからその前に、頭を使うことや体を動かすことが好きになる、少なくとも嫌ではないようにしておくことが大切なんですね。

親も『ポピっこ』でトレーニング

いざ三つほめようとすると結構難しいものですが、そこは親側のトレーニング。「ほめるときは行動をほめる、禁止するときも行動を禁止する」が基本です。行動をほめることは、裏で禁止を言っているに近くなるので、それを含めて考えると、1対3のバランスもとりやすくなるかもしれません。
『ポピっこ』をだらだらやっているとか、何もわからずに手が止まっているように見えることがありますが、脳活動を調べてみると、実はしっかりと活動していることが多々あります。だからあわてず、ちょっと待ってみることも大切です。脳が活動しているのかどうか見極めるのはそう難しいことではありません。ポイントはまばたきの減少と体動の停止。集中しているとまばたきが減り、頭を含めて身体の動きが止まります。そうした観察力をつけ、子どもと粘り強くつき合うことが好きになる、これは親にとって必要なトレーニングですね。
『ポピっこ』を親子一緒にやることで、子どもは頭を使い、体を動かし、人とかかわるのが好きになる。親は子どもとかかわるのが好きになる。幼児ポピーはそうなるように工夫を重ねています。
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