ヒゲおやじ先生の脳コラム

2017.12.01

睡眠だいじ、窓だいじ

昔から「寝る子は育つ」といいますが、今回は、科学的に示された睡眠の重要性についてお話しくださいます。質のいい睡眠をとることも脳トレになるようですよ。

レム睡眠とノンレム睡眠

睡眠には眼球がピクピク動き、夢を見ていることの多いレム睡眠と、深い眠りのノンレム睡眠があります。ノンレム睡眠のときには周波数の少ないゆっくりした脳波(徐波〔じょは〕)が現れるので、徐波睡眠ともいいます。カードの位置関係を覚えるときにバラの香りをかがせるという実験で、徐波睡眠中にまたバラの香りをかがせると、記憶に関する部位(海馬〔かいば〕)の活動が高まり、かがせない場合に比べて、翌朝にカードの位置関係をよく覚えていることが報告されています。 また、バラの香りなど使わずに、睡眠中に現れる徐波を電気刺激で強化するだけで、記憶が定着しやすくなるとか、徐波睡眠中に練習している曲を聴かせると、より上手になるとか、つい最近では、外国語の単語の学習で、徐波睡眠時に外国語の単語を聴かせると、学習効果が上がることも報告されました。

※この記事は、「ほほえみお母さん&お父さん」2015年1月号に掲載されたものです。

外国語単語の学習実験

スイス国立科学財団のビョーン・ラッシュらは、ドイツ語を母語として育ち、オランダ語を一度も学習したことのない生徒60人を対象に次の実験を行いました。 まず全員に、午後10時ごろ、オランダ語の単語をいくつか学んでもらいました。その後、彼らの半数には研究室で仮眠をとってもらい、残りの半数にはそのまま眠らないでいてもらいました。 仮眠グループはノンレム睡眠の間に、眠らないグループは起きた状態のまま、午後10時に学習した単語と同じものの録音を聞かされました。 午前2時、仮眠を取っていたグループは起こされ、眠らなかったグループとともに単語のいくつかをテストされました。その結果、仮眠グループは眠っている間にだけしか単語を聞かされていなかったにもかかわらず、夜更かしを余儀なくされたグループよりも単語の意味を理解していました。単語の聞き流しは、夜更かしグループには何の効果もなかったにもかかわらず、です。

質のいい睡眠はだいじです

仮眠グループが眠っている間の脳波を調べたところ、単語を聞かされたときに、前頭部の活動を示す特徴が現れ、また、単語の再生に伴い、右前頭部と左頭頂部ではシータ波のパワーが増大したそうです。シータ波は、覚醒時の記銘(覚えること)と関わりがあるもので、同じことが睡眠中でも起こっているから記憶が定着したと考えられます。 このような研究の蓄積によって、深い眠りの間に記憶が定着することが明らかになっているわけです。加齢に伴って深い眠りを示す徐波が少なくなりますが、これが加齢に伴う記憶力低下の一因と考えられており、大人にとっても子どもにとっても、質のいい睡眠はだいじです。

いい睡眠をとるのも脳トレ

質のいい睡眠をとるには、昼間の運動量を多くすることです。週あたり150分の中~強度の運動を行っていると、睡眠の質がよくなり、昼間に眠気を感じにくいことが報告されています。ただし運動を始めた数日は興奮してかえって眠れなくなりやすいので、そこは我慢のしどころです。 午前中の日差しを浴びることもだいじです。視交叉上核〔しこうさじょうかく〕などの体内時計を正常に保ち、睡眠の質をよくし、生活の質を高めるからです。窓のある職場のほうが睡眠の質がよく、長く眠れ、生活の質も高いそうですから、窓だいじです。 食事時間を一定にすることも体内時計のリズムを保つ上で重要です。入眠の2、3時間前には入浴し、寝る前の刺激を避け、布団をかけて体表温度を保つと、深部体温が低下し、すんなり眠りにつけます。これも脳トレです。 また、ふだん昼寝をしている幼児は、昼寝を一回抜くと、注意力や理解力、発想力が落ちるとの研究報告もあります。ですから、昼寝も脳トレ、だいじですね。

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