ヒゲおやじ先生の脳コラム

2017.12.01

『ポピっこ』は脳活動を調べながら作っています(2016年)

『ポピっこ』監修の篠原先生が、毎回、脳を育てるヒントをくださるコラム。今回は、『ポピっこ』シリーズの新教材『しあげのドリるん』の実験結果のお話です。

幼児ポピーでは、子どもたちの脳の力を伸ばすことを目指して教材の開発をしています。その一環として、毎年、子どもたちが教材を使っているときの脳活動を調べています。 昨年度は、新しく出した『ポピっこ』教材『しあげのドリるん』を使っているときに、教材のねらいである「あたまのつかいかた」(ワーキングメモリという機能がかかわる)が鍛えられているかを調べました。

※この記事は、「ほほえみお母さん&お父さん」2016年4月号に掲載されたものです。

「もじ」課題の脳活動

まずは「もじ」課題を行っているときの幼児の脳活動を二つご紹介します。今回使った「もじ」課題(図1)は「り」「こ」「く」などのひらがなの学習ですが、頭に何かを浮かべておきながら同じものを探すなど、何らかの知的作業を行うのに必要なのが、ワーキングメモリ(作業記憶)です。そしてこのワーキングメモリの力こそ知的活動の中核であり、われわれはこの力を使って、学習したり、仕事をしたり、家事をこなしたり、人と会話したりしています。

ではこのもじ課題を行っているときの二人のお子さんの脳活動を紹介します(図2)。

左右の前の方が前頭前野(ぜんとうぜんや)でワーキングメモリが深くかかわる脳部位です。ⒶⒷいずれのお子さんのケースでも左右の前頭葉(ぜんとうよう)を中心に脳が活性化しています。前頭前野はざっくりいうと右脳は画像的イメージ的なワーキングメモリ、左は言語的論理的なワーキングメモリにかかわります。この課題では「もの」のイラストを理解し、かつその名前をおそらく映像的に思い浮かべ、共通するひらがなを探すという論理的な知的作業をしているので、左右の前頭前野が活性化したものと思われました。 また脳の後ろのほう、頭頂葉(とうちょうよう)も共通して活性化していますが、頭頂葉は空間認知にかかわるので、幼児がこの課題を解くとき、名前をひらがなで映像的に思い浮かべ、同じひらがなを探したものと想像されます。

「かず」の課題は?

『しあげのドリるん』では「かず」の課題でもワーキングメモリがより使われるように工夫をこらしています。たとえば課題が表と裏にまたがる「みなみのしまのいちば」(図3)。

さすがに幼児では、表側のページで覚えただけで、裏のページの課題にすべて答えるのは難しいですが、ページを戻ってもいいようになっているので、「あれ、どうだったっけ」と課題を記憶しながらページを戻り確認することがくり返されます。このことによって数の学習でありながら、映像がくり返し脳に記憶されます。あるいは「バナナは5本あって、2本持ってきた」など言葉にして、脳の中で繰り返して記憶していく場合もあります。 では脳活動を見ていきましょう(図4)。

Ⓒのお子さんは、左の脳では上側の活動が目立ちます。これは画像的なワーキングメモリを使う場合に見られる特徴の一つで、空間的な位置関係の把握にかかわる頭頂葉と連動して、いわゆるWhereルート(それがどういう位置関係にあるか、映像を絡めて処理するルート)が活性化しています。目からの情報は頭の後ろのほう、後頭葉(こうとうよう)に入ります。そこから二手に分かれ、下側のルートを通るのがWhatルート(それが何であるか言語と絡めて処理するルート)。このお子さんのケースでは上側ルートを使って、空間的なワーキングメモリを使ってこの課題を解いたのがわかります。
Ⓓのお子さんは上側ルートだけでなく、下側ルートが使われています。左の側頭葉(そくとうよう)、前頭葉下部の発話性言語野(はつわせいげんごや)が使われています。画像的に覚えるだけでなく、言葉のワーキングメモリも使って課題を行ったわけです。

幼児ポピーはワーキングメモリを鍛える

こうしたデータをまとめたものが次のグラフです(図5)。

『しあげのドリるん』では、幼児の脳活動の成熟を示すと考えられる左脳優位性(幼児期の脳は成熟すると、右脳→左脳へ活動が移る)が認められました。また、ワーキングメモリとかかわる、左の前運動野を含む前頭葉で活動が高まっており、『しあげのドリるん』は、ワーキングメモリトレーニングになり、幼児の脳を成熟させていくと考えられました。
興味深いのはポピー歴(ポピーの使用年数)との関連でした(図6)。
ポピー歴1年未満では、前頭葉のうち、注意にかかわる左前頭葉上部、行動のプランニングにかかわる前運動野(ぜんうんどうや)で活動が高まっていましたが、ポピー歴が1年以上になると言語的・論理的ワーキングメモリの中核である左背外側(ひだりはいがいそく)前頭前野で活動が高まっていました。ポピーを1年以上続けることで、ワーキングメモリの力が育っていることを示すものと思われました。

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