ヒゲおやじ先生の脳コラム

2017.11.30

脳が若返る未来

タイトルに気がはやる方も多いでしょうが、今回は、最近の新しい知見についてのお話です。ネズミの研究がヒトへとつながるか、興味深いですね。

若者の血で若返る

昨年の5月4日に、衝撃の報告がありました。なんと、人間だと20~30歳に相当する若いネズミから、56~69歳相当の老齢ネズミに輸血を複数回行ったところ、老齢ネズミの脳が若返ったというのです。
老齢ネズミの脳のシナプス可塑性(かそせい)が向上して、つまり、脳が新しいことを学ぶ柔軟性が回復して、脳の構造に変化がみられ、認知機能(頭の働き)が改善したというのです。

※この記事は、「ほほえみお母さん&お父さん」2015年7月号に掲載されたものです。

GDF11で若返り

前々から同様の手法で筋肉などの若返りが報告されていましたから、そうか、脳もか、と思っていたところ、今度は血液の中のGDF11(成長差別化因子)という物質を補えば脳や骨格筋が若返るという報告が追い打ちのように出てきました。
血液の中にあるGDF11は老化に伴って低下するのですが、それを老化したネズミに補充したところ、老化したネズミの脳血管が若返り、神経新生が増え、筋力が向上し、筋持久力も改善したというのです。
具体的には、40歳くらいに相当するネズミに一日一回、一か月GDF11を投与したところ、脳血管が50%増え、これから脳細胞になる神経幹細胞が29%増加、筋肉量はなんと2倍になり、持久力も1.5倍になったのだとか。
この発見は日本ではさほど話題になりませんでしたが、『サイエンス』という有名科学誌の昨年の十大発見の一つに選ばれています。

効果の紹介で株価も上昇

日本で話題になったのはむしろNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)。ビタミンB3の一種です。
今年の正月、このNMNの量産に成功した会社を子会社に持つ食品会社の株がぐっと上がりました。NHKでNMNの若返り効果が紹介されたからだとか。
少し面倒な話になりますが、NMNによって増えるNAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド酸化型)は、たとえばエネルギー産出に必須なミトコンドリアと各細胞核のコミュニケーションにおいて重要な役割を果たすなど、生き物にとって重要な役割を果たしていますが、残念ながら歳とともにNAD+の量は低下してしまいます。
しかしNMNを与えてNAD+を増やすと、60歳相当のネズミの細胞を、20歳相当のネズミの細胞に若返らせることができることが報告されているのです。脳でもNAD+やその生合成にかかわる主酵素Nampt(ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ)が重大な役割を果たしていますから、NMNは脳の若返りにも有望です。

若返り花盛り

京都大学の山中先生のiPS細胞も脳や体の若返り話ですし、クロトー遺伝子、mTOR阻害剤、腸内フローラなどいまや若返り話は花盛り。人への応用にはまだまだ時間がかかりますが、みなさんが高齢者になるころには、体の老化も、脳の老化も、お肌も、髪の毛も、老化の憂いなどなくなってしまうのかもしれません。
そうでなくとも子どもたちが高齢者になるころにはほぼ確実な未来、そう思えてきます。そしてそうなるころには、朝のサプリや簡単な手術で脳力アップなんてことになっているかもしれません。
その未来をよしとするか、嫌悪するか。ま、先の話ですが。
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