ヒゲおやじ先生の脳コラム
思いやりを育てるには
「思いやりのある子に」は、親の願いの一つではないでしょうか。今回は、思いやる力と脳とのかかわりとともに、それを育てるヒントをお話しくださいます。
他人の不安を読み取る力
ジョージタウン大学のアビゲイル・マーシュ教授らは腎臓提供者(ドナー)19人と、臓器の提供をしたことがない20人に「怯え・不安」「怒り」「平静(無表情)」を表している顔を見せながら、脳をスキャンしたそうです。
その結果、ドナーのほうが「怯え・不安を感じている顔」を見ているときに右の扁桃体(へんとうたい)がより活発に活動し、また、顔から感情を推測するテストでも怯えや不安の表情をより正確に読み取っていたそうです。
また、マーシュ教授らは、良心が異常に欠如し、他者に冷淡で共感しないサイコパスは扁桃体が小さめで、他人の怯えや不安の表情に対してほとんど反応しないことを報告しています。
扁桃体は不安や恐怖を感じたときに活動する部位ですから、他者の不安、怯え、恐怖をわがことのように感じ取る力が「思いやり」に深くかかわるようです。
裏の意味を読み取る力
分け前を与えられた人は、いくらであっても受け取るのが得ですが、あまり額が少ないと理不尽に感じます。おおむね3分の1を下回ると拒絶する場合が多くなります。
ですから、その気持ちを読み取って3分の1以上を提示する人がいる一方で、相手はいくらであっても受け取るべきと考え、3分の1以下、場合によっては1フランしか与えない人もいます。
そして、脳をスキャンしたところ、他人の気持ちを斟酌(しんしゃく)して大きい額を与える人のほうが、脳の側頭頭頂接合部(そくとうとうちょうせつごうぶ)の灰白質(かいはくしつ)が大きいことがわかったそうです。側頭頭頂接合部は、「比喩の理解」「裏の意味を読み取る力」「自他の区別」「相手の気持ちを理解する力」に関わることが知られ、ここが損傷すると、裏の意味、ことに裏に隠された相手の気持ちを読むことが困難になります。また道徳的判断に影響が出ることも知られています。
先天的か後天的か
では、他人を思いやる力は脳で決まっているのだから、育てようがないのでしょうか?
もちろん違います。フェール教授も「他人に尽くす考えや行動が、脳などの生物学的な原因だけで決まると急いで結論づけるべきではない」とし、子どもが大人になるまでの成長過程において「他人を思いやる気持ち」を学ぶ機会を増やし、自分より他者を優先することが結果的に自分に幸をもたらすことを理解させるようなケーススタディーを繰り返すことで、側頭頭頂接合部が成長していくのか調査していくそうです。
側頭頭頂接合部は読み聞かせなど、ポピーの学習時によく活動する場所の一つですから、ポピーをしっかり行うことも「思いやり」を育てるうえで大事でしょう。
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