篠原先生

2017.12.14

約束は脳を育てます

「この前約束したでしょ。なんで守れないの?なんて言うこと結構ありますよね。なぜ子どもはなかなか約束を実行できないのか?今回のお話で実感できますよ。

○○○のスクリーニングテスト

早速ですが、次の項目はある病気かどうかをチェックするための医師用のマニュアルです。
さて、なんという病気のテストかわかりますか?

1. 「今年は何年ですか」「いまの季節は何ですか」「今日は何曜日ですか」「今日は何月何日ですか」の質問を口頭でする。
2. 「ここは何県ですか」「ここは何市ですか」「ここは何病院ですか」「ここは何階ですか」「ここは何地方ですか」の質問をする。
3. 3個の物体を見せてその名前を言い、その後、被験者に物体の名前をくり返し言わせる。
4. 100から順に7を引く、あるいは「フジノヤマ」を逆唱させる。
5. 3で提示した3つの物体の名前を再度言わせる。
6. 時計を見せながら「これは何ですか?」、鉛筆を見せながら「これは何ですか?」と聞く。
7~11略)

お察しのとおり、これは「認知症」のスクリーニングテストです。
日本では認知症のスクリーニングテストとして、MMSEと長谷川式がよく用いられますが、これはMMSEです。認知症はこういうテストの成績や、脳画像などを参考に診断をするわけです。

脳のメモを維持する

さて、今回お話したいのは、このテストの3. 4. 5.の部分です。この部分は、何かを覚えて、邪魔なことをして、それでも記憶が消えずに思い出すことのできる力をチェックしています。
脳のメモを維持する力、脳のメモを複数使う力を調べている、と言い換えてもいいかもしれません。
というわけで、似たタイプのテストを体験してください。

1. これから言葉を五つ示します。一つにつき3秒で覚え、隠していってください。
心の中で、1、2、3と数えたら隠すのです。

 かえる   コーヒー    時計    インク    ふくらはぎ

2. 次の文章はあっているか、○×をつけてください。
上の言葉は見えないようにしっかり隠しておいてください。

キリンの足の数×人の足の数は、6である。 ……(  )
明日のおとといは昨日である。 ……(  )
アルファベットでGの次の次はJである。 ……(  )

3. さて、最初に覚えた五つの言葉を言ってみてください。

約束も脳のメモのお仕事

認知症のスクリーニングテストと比べると、はるかにきついですね。
でも、こういうきつさが、実は子どもが約束を守ろうとするときには「ある」のだということに思いをはせていただきたくて、こんなテストをしてもらったのです。

私たちにとって認知症のスクリーニングテストは楽勝でしょう。しかし、次の問題はきつい。
同じように、子どもにとって約束を守ること、覚えておくことはなかなかに「きつい」のです。
楽しいことがあればついそちらに気を取られます。忘れてしまいます。
まして約束がいくつも重なってくると、私たちが難しい問題をやっているときのようなもの。
約束がふっとんでしまっても無理はありません。

だからこそ、「約束」は脳を育てるのです。「約束」は子どもの脳のメモを鍛えるのです。

「脳のメモ」の鍛え方のひとつのポイントは、その子にとっての適度な課題設定です。
その子にとって、難しすぎる、多すぎる約束では、脳のメモがついていけませんし、楽すぎる約束では鍛えることにはなりません。ちょっとがんばればなんとかなる、そういう約束をうまく設定しましょう。

もう一つのポイントは報酬。約束を表に書き出し、項目ごとに「出来たら、プラス50点」「プラス30点」、「出来なかったら、マイナス10点」などと決めます。そして1日とか、1週間とか決めて、計○点以上ならおやつを増やすとか決めるわけです。このときのコツはプラス側を高めにしておくことです。約束を守らないからとカリカリせず、こここそ脳の育て時と工夫してみてください。
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